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山根文子 作品展
2004.5/29(Thu)〜6/4(Wed)

意欲的な抽象画の世界

 自分のなかにわき起こりひろがりゆくのもを、好きな色や形で自由に表現する。 何かの写生や臨画などではない純粋な形を、追求する。目に見えないものを目に見えるように描く。抽象画の魅力といっていいだろう。

 鳥取市在住の山根文子さんは、一昨年につづく第四回の作品展をひらく。 意欲的な16点の抽象世界が目をうばう。今回は「深刻ぶらず安気(あんき)に描くことができた」とか。遊びごごろがせりだしてきたのだろうか。その分、気負いがなくなり楽しみなが描くことが多くなったのかもしれない。

 「桃山」という 30 号の絵がある。山根さんは16世紀後半の桃山時代にひかれ、この時代を華やぎ激しく動いた時期ととらえた。美術史から見ると風俗画や陶芸、染織などが開花した時代。中世から近世への過渡期と位置づけられている。その桃山と呼ぶ時代の姿をカンバスに表現したのがこの作品だ。

 白濁色の壁を全面に捉えた。壁は空間を隔てる障害物である。その壁を内部から力強く打ち破ってみる。そこから噴出するもの飛び散るもの豊潤なもの、を筆やナイフで描いてゆく。アクリル絵の具の速乾性を生かして、絵の具を流したり垂らしたりにじませたりもした。絵の表情がいっそう多彩になり、思いがけない新鮮な表現効果が生まれてくる。

 さらに黒い四角を造形する。きっちりした直線で正方形のカンバスを深く区切った。この黒い空間は「桃山」を突き抜け、四次元のかなたにひらかれているように見えなくもない。

 こうして時代の華やぎと激しさを、ほとばしる青や赤や黄色に重ねて浮かびあがらせた。

「桃山」のたくましいエネルギーと見ていいかもしれないが、見るひとの存念によってさまざまに異なった印象や感動をあたえるだろう。抽象画のおもしろさだ。山根文子さんはおなじ「桃山」というテーマで、ほかに5点を制作している。楽しき連作である。

 部分的にリアルな表情(具象)を加えた「船出」も目を引く。全体が海中にただようように自在にゆれている。泡立つ青さに溶けこみ潜んでいる魚や人や貝も、そして三日月のように光るものも、ゆっくりぶれている。沈静な質感を堪能できる作品だ。

 これに対し、感情が激しく流動している「おたねの渕」。芳香を放つようにして幾層にも渦巻く色。色層とは生成するものかもしれない。「思いっきり遊んでみた」というが、劇的なタッチと重厚なマチエールとが作用し合い、色彩は感覚であって理屈ではない、と思い知らされた。発酵する色彩におぼれ、女はそのまま果肉に変わってゆく。

 山根文子さんはチェロの音楽を聴きながら制作することもあるそうな。 チェロの曲想がガンバスに定着する日も近いかもしれない。

須 崎 俊 雄(鳥取市・「断層」同人)

山根文子:鳥取市在住