過去の展覧会



わたせのぶあき展
10/1(Mon)〜10/7(Sun)

わたせのぶあき:鳥取市在住

エネルギーあふれ出すわたせのぶあき展

野川 聡

 ムッシュからの手紙。毎年楽しみにしている個展の知らせだ。あれから一年、今年も「わたせのぶあき展」がはじまる。今回も彼が半世紀以上にわたって見続けてきた、そして描き続けてきた「大山」がメーンとなっている。昨年は彼のスケッチに同行できたおかげで、絵心の全くない私のようなものでも、すぐそばで彼の一挙手一投足をつぶさに見ることができ、そのままを素直に文字・活字にすることが可能だったのだが、さて今回はどうしたものか…と思案した挙げ句、早速、彼の元を訪れることにした。

 ここで、少しだけ回想させていただきたい。私と彼との出会いはさかのぼること七年前。当時、職場の仕事のため、ある雑誌の表紙の作成を依頼したことがきっかけだった。今でも、その日のことを鮮明に覚えている。依頼していたその表紙の出来上がりを見て、驚いたの驚かないの、私もその場に居た職員も一瞬かたずをのんだ。描かれた図柄はなんと、その九割が黒で、その周り一割が赤で構成されていた。これだけのヒントで何が描かれているかわかる人はまさかいないとは思うのだが、その絵は旧因州池田屋敷表門、上野にある通称「黒門」だった。今でこそ正直に言うが、初めはあぜんとして声もでなかった。だが不思議なことに、見れば見るほど、これがまたこの世に存在する唯一無二の正統「黒門」と思えてくるのだから恐れ入る。今でもたまに雑誌を引っ張り出しこの表紙を見ると、当時が思い起こされ、懐かしくもあり、うれしくもあり、元気がわき出てくるのである。

 事ほどさようにムッシュの絵はすべて、インスピレーションから誕生するのだ。私にとっては昨日見た大山も今日見る大山も同じ「大山」なのだが、ムッシュにとっては明らかに違うのである。何度も言って恐縮だが、私には絵心が全くない。しかし,誰が見ても誰の作品だと分かる絵は、しかも瞬時に分かる絵はそうあるものではない。私のようなものに評価されるのは、はなはだ気の毒ではあるが、彼の作品スタイルは不動のものであることにほかならないのである。

 今回の「わたせのぶあき展」は今年もたくさんの来場者を「あっ」と驚かせることだろう。どうか、「わたせワールド」を存分に堪能し、素直に驚きの声を我慢せずに堂々とあげていただき、展示された一つひとつの絵から勇気とエネルギーをもらっていただきたい。もちろん、私としてもずるいとは思ったが、皆さんより一足先にそのエネルギーをもらい、この原稿を書いている次第である。

  (鳥取県財政課長)

◇「わたせのぶあき展」は1日から7日まで、鳥取市本町1丁目のギャラリーあんどうで。

 

9月30日 日本海新聞掲載記事より